① ステージ(進行度)
ステージ0
非浸潤がん
- がんが乳管内にとどまる
- 転移なし
主な治療
- 手術
- 放射線治療(温存術の場合)
- ホルモン療法(必要時)
ステージⅠ
早期乳がん
- 腫瘍2cm以下
- リンパ節転移なし
主な治療
- 手術
- 放射線治療
- ホルモン療法
- 必要時抗がん剤
ステージⅡ
比較的早期~中期
- 腫瘍2~5cm程度
- 一部リンパ節転移あり
主な治療
- 手術
- 抗がん剤
- ホルモン療法
- 放射線治療
ステージⅢ
局所進行乳がん
- 乳房外へ広がる
- リンパ節転移が多い
主な治療
- 術前薬物療法
- 手術
- 放射線治療
- 術後薬物療法
ステージⅣ
遠隔転移あり
転移部位例
- 骨
- 肺
- 肝臓
- 脳
主な治療
- 薬物療法が中心
- 症状緩和治療
- 必要時放射線治療
- 一部で手術
目的は
「がんと共存しながら生活の質を保つこと」
② がんの性質
乳がん治療で非常に重要です。
ホルモン受容体陽性
ER陽性
PR陽性
特徴
- 女性ホルモンで増殖
- 最も多いタイプ
主な治療
- ホルモン療法
例
- タモキシフェン
- アナストロゾール
- レトロゾール
HER2陽性
HER2タンパクが多いタイプ
主な治療
- 抗HER2療法
例
- ハーセプチン
- パージェタ
トリプルネガティブ
- ER陰性
- PR陰性
- HER2陰性
主な治療
- 抗がん剤
- 免疫療法
③ 患者さんの状態
同じステージでも
- 年齢
- 閉経前か閉経後か
- 体力
- 持病
- 転移部位
によって治療は変わります。
④ 治療の選択
手術
乳房部分切除術(乳房温存術)
乳房の一部を切除する手術方法で、がんから1~2㎝離れた周囲を含めて切除します。がんを確実に切除し美容的にも満足できる乳房を残すことを目的に行います。
乳房切除術
乳房をすべて切除する手術方法で乳がんが広範囲に広がっている場合や乳房内の離れた場所に複数のがんがある場合に行います。
腋窩リンパ節郭清
腋窩リンパ節とは、脇の下のリンパ節のことです。手術前の触診や画像診断などで腋窩リンパ節にがんが転移していると診断された場合は、リンパ節を切除する手術を行います。
乳房の再建
乳房の再建とは、自家組織(自分のお腹や背中などから採取した組織)やシリコンなどの人工物を用いて新たに乳房を作ることです。再建の時期によって乳がんの手術と同時に行う一次再建と数カ月から数年後にに行う二次再建とがあります。
※乳がんの手術後に起こることがある症状として、腕や肩を動かしにくい、リンパ浮腫などがあります。担当医に相談の上 リハビリなど日常生活に工夫を取り入れましょう。
放射線治療
放射線治療は、高エネルギーのX線などを使ってがん細胞を破壊する治療です。乳がんでは手術や薬物療法と並ぶ重要な治療法の一つです。
放射線治療の目的
① 再発予防
最も多い目的です。
乳房温存手術後に残っている可能性のある微小ながん細胞を死滅させ、乳房内再発のリスクを下げます。
② リンパ節再発予防
がんがリンパ節に転移していた場合、鎖骨上リンパ節や腋窩リンパ節周辺に照射することがあります。
③ 症状緩和(緩和照射)
ステージ4で骨転移や脳転移などによる痛みや症状がある場合に行われます。
- 骨転移による痛みの軽減
- 骨折予防
- 脳転移による神経症状の改善
放射線治療が行われる主なケース
乳房温存手術後
乳房温存術後は標準治療として放射線治療が推奨されます。
乳房全摘術後
以下の場合に検討されます。
- 腫瘍が大きい
- リンパ節転移が多い
- 胸壁再発リスクが高い
放射線治療の流れ
1. 治療計画CT
照射範囲を決めるためにCT撮影を行います。
2. マーキング
体の位置を毎回同じにするため、小さな印を付けます。
3. 治療開始
一般的には
- 週5日(月~金)
- 3~5週間程度
通院で行います。
1回の照射時間は数分ですが、準備を含めると15~30分程度です。
放射線治療の副作用
副作用は治療中から数週間以内に起こる「急性期副作用」と、数か月~数年後に起こる「晩期副作用」があります。
急性期副作用
① 皮膚炎(最も多い)
日焼けのような症状です。
症状
- 赤み
- ヒリヒリ感
- かゆみ
- 色素沈着
- 皮むけ
治療終了後もしばらく続くことがあります。
② 疲労感
多くの患者さんが経験します。
- だるい
- 疲れやすい
- 眠気
③ 乳房の腫れや違和感
- 張る感じ
- むくみ
- 痛み
④ 咽頭炎・食道炎
鎖骨上リンパ節への照射時に起こることがあります。
- のどの痛み
- 飲み込みにくさ
晩期副作用
① 乳房の硬化
照射した乳房が硬く感じることがあります。
② 色素沈着
照射部位が茶色っぽくなる場合があります。
③ リンパ浮腫
リンパ節郭清を受けた方は、放射線治療によって腕のむくみが起こりやすくなることがあります。
④ 肺への影響
まれに放射線肺炎が起こることがあります。
症状
- 咳
- 息切れ
- 発熱
⑤ 心臓への影響
左乳がんの場合、心臓が照射範囲に近いため注意が必要です。現在は照射技術が進歩しており、心臓への影響は大幅に減っています。
ステージ4での放射線治療
ステージ4でもよく行われます。
例えば、
- 骨転移の痛み
- 脳転移
- 局所再発
- 出血や腫瘍による症状
に対して高い効果が期待できます。
特に骨転移による痛みは、照射後数週間で改善することが多いです。
「ステージだけでは治療は決まらない。がんの性質がとても重要」
乳がんの薬物療法について
乳がんの薬物療法は、手術や放射線治療だけでは届かない全身のがん細胞に作用する治療です。乳がんのタイプやステージによって治療法が異なります。
薬物療法の目的
術前薬物療法
手術前に行う治療です。
目的
- がんを小さくする
- 乳房温存の可能性を高める
- 薬の効果を確認する
術後薬物療法
手術後の再発予防が目的です。
目に見えない微小ながん細胞を減らし、再発リスクを下げます。
再発・ステージ4の治療
がんの進行を抑え、症状を軽減しながら生活の質(QOL)を維持することを目指します。
乳がんのタイプと治療選択
乳がんは主に以下の3つに分類されます。
ホルモン受容体陽性乳がん
- ER(エストロゲン受容体)陽性
- PgR(プロゲステロン受容体)陽性
乳がん全体の約70%を占めます。
治療の中心はホルモン療法です。
HER2陽性乳がん
HER2というタンパク質が過剰に発現しているタイプです。
治療の中心は抗HER2療法です。
トリプルネガティブ乳がん
- ER陰性
- PgR陰性
- HER2陰性
ホルモン療法や抗HER2療法が効かないため、化学療法が中心になります。
ホルモン療法(内分泌療法)
ホルモン受容体陽性乳がんに使用されます。
女性ホルモンの働きを抑えてがん細胞の増殖を防ぎます。
閉経前
主な薬
- タモキシフェン
- LH-RHアゴニスト製剤
主な副作用
- 更年期症状
- 発汗
- ほてり
- 気分変動
閉経後
主な薬
- レトロゾール
- アナストロゾール
- エキセメスタン
主な副作用
- 関節痛
- 筋肉痛
- 骨粗しょう症
- 骨折リスク増加
分子標的薬
がん細胞の特定の仕組みを狙って攻撃する薬です。
HER2陽性乳がん
代表的な薬
- トラスツズマブ
- ペルツズマブ
主な副作用
- 発熱
- 下痢
- 心機能低下
治療中は定期的に心エコー検査を行います。
CDK4/6阻害薬
ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんで広く使用されています。
代表的な薬
- ベージニオ
- イブランス
- キスカリ
主な副作用
- 白血球減少
- 下痢
- 倦怠感
- 肝機能障害
- ベージニオ
- レトロゾール
の組み合わせは、ホルモン受容体陽性HER2陰性の進行・再発乳がんでよく用いられる標準的な治療です。
化学療法(抗がん剤治療)
細胞分裂の盛んながん細胞を攻撃します。
代表的な薬
- ドセタキセル
- パクリタキセル
- エピルビシン
- シクロホスファミド
主な副作用
- 脱毛
- 吐き気
- 食欲低下
- 感染症
- しびれ
現在は吐き気止めが進歩し、以前より症状を抑えやすくなっています。
免疫療法
一部のトリプルネガティブ乳がんで使用されます。
代表的な薬
- ペムブロリズマブ
免疫の力を利用してがんを攻撃します。
骨転移がある場合の治療
骨転移がある患者さんには骨関連事象(骨折や痛みなど)を予防するための薬が使われます。
代表的な薬
- ランマーク
- ゾレドロン酸
「デノタス」は薬そのものではなくデノスマブ治療中に必要となるカルシウム・ビタミンD補充薬です。
注意点
- 低カルシウム血症
- 顎骨壊死
予防のため歯科受診が推奨されます。
